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明治三十年代の大陸を相手に景気が出始めたころ、北九州の港湾には人間のあらゆる欲望がぎらぎらと沸き立っていた。そうした門司港へやって来た二十六歳の玉井金五郎。がっちりした体躯、精悍な眼差しは野望に燃えていた。早速とび込んだ博打場で、彼はたちまち着ている物まで剥ぎ取られる破目になったが、壷振りの女が「いつかあたしに彫らせてね」と囁いた。その時女の袖口から、牡丹に蝶の刺青が真白な腕にくっきりと浮き上っているのが見えた。浜尾組の仲仕となって働くようになった金五郎は次第に頭角を現わしていった。そのころ北九州一帯を襲った上海コレラにもびくともしない彼を、女仲士のマンはいつか想うようになっていた。人一倍勝気なマンが、いま旭日昇天の勢力を持つ吉田磯吉親分の客の望みをはねつけたことから、吉田の子分達に襲われた。すぐさま抗議に乗り込んだ金五郎は、素直に謝まる吉田の豪放な...
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