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昭和五年の秋の北海道北見高原を十数頭の馬を追って行く二人の男があった。今しも一頭の馬が軍を離れて凄い勢いで突っ走り始めた。それを追って巧みな投縄で引きとめた一人の男は馬喰仲間でも「北海の虎」と異名をとった乱暴男の片山米太郎だった。その日の馬市で彼は馬を売払って相棒の鳥取太郎と共に久しぶりで相当の金を懐にしたが、これをねらっていた元馬喰、いまは高利貸になった小坂六太郎は、米太郎を賭博にさそって、小料理「桃代」ですっかりその金をまきあげてしまった。「桃代」の酌婦ゆきは六太郎の誘いにもなびかず、ひたすら米太郎を想っていたが、彼には家にはるのという従順な女房と大平という可愛い倅があったので、会えば借金を催促されるゆきをひたすら敬遠していた。賭博で金をすった米太郎は病気のはるのの薬も買えない有様だったが冬になって例年の如く山仕事に出稼ぎしていたときはるのの危篤...
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